独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.151 「クエ栽培漁業セミナー 〜クエ資源の維持・増大を目指して〜」を開催しました  2009/12/01
五島栽培漁業センター 場長 服部 圭太
 「クエ栽培漁業セミナー 〜クエ資源の維持・増大を目指して〜」を9月26日(土)に長崎県五島市の「観光ビルはたなか」で開催しました。

 セミナーには,クエの漁獲量が最も多い地元長崎県の漁業関係者や行政機関,試験研究機関の関係者をはじめ,「クエで町おこし」を掲げている和歌山県日高町の関係者など約110人が参加し,クエ漁業の持続的発展を図るために,漁業のあり方や資源管理の方向性について,活発に意見が交わされました。
 クエは九州地方を中心に“あら”と呼ばれ,冬場の鍋物などに人気が高い魚です。最需要期には8,000〜10,000円/kgの高値で取引されるほどの超高級魚といわれています。また,和歌山県では京阪神の固定客を中心として多くの観光客を呼び込むなど,地域経済を支える貴重な漁業資源です。
 そこで,セミナーでは,まず,
1.長崎県におけるクエの漁業実態調査結果から(株式会社 水土舎 乾 政秀),
2.「クエで町おこし」和歌山県日高町の取り組み(日高町 西岡達人,日高町商工会 荊木宣雄)
の2題のご講演をいただきました。

 この中で,好漁場に恵まれた長崎県では古くからクエが漁獲されているが,近年,クエ延縄漁(あら縄)への参入が急増しており,貴重な資源を維持するためルール作りが急務であることが示されました。また,和歌山県日高町からは,町をあげて“紀州クエ”のPRに取り組み,地域経済に大きな効果をもたらしている半面,漁獲量の落ち込みにより地元でのクエの調達が困難になっている現状が紹介されました。
 クエ漁業への期待が極めて大きいことから,水産総合研究センターでは資源の維持増大に向けた研究開発を行っていますが,クエはベテランの漁業者でも「めったに獲れない魚」であるため,その生態は謎に包まれています。
 セミナーの後半では,長崎県総合水産試験場と水産総合研究センター五島栽培漁業センターから3題の講演によって,漁獲場所や年齢,成長などクエの生態と漁業実態の調査結果,親魚養成・採卵と種苗生産の技術開発成果などとともに,標識放流,市場調査等による放流効果の調査体制も構築が進んでいることが報告されました。

 また,放流効果を把握する際の基礎となる放流魚の移動範囲を知るための標識放流に関して,ダート型標識の付いたクエを見つけたら報告していただくよう呼びかけが行われました。
ダート標識(右上)をつけたクエ

これらの講演に対して,会場の漁業者から
「クエは旺盛な需要から獲れば売れる状態が続いているが,このままでは資源の枯渇が懸念される」
「種苗放流によって“増やす”努力はみんなで力を合わせてやる。漁場利用に関しては,県内統一したルールづくりを急ぐべきだ」
などの意見が相次いで出されました。