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宮古栽培漁業センター 野田 勉 | ||||||||
クロソイ(写真1)の種苗生産では,飼育開始後数日に起こる初期死亡が問題となっています(さいばい日記参照)。 魚類の種苗生産を行う際に,卵や仔魚の質を評価する方法として,「卵の受精率」や「餌を与えずに,仔魚が生きていられる日数(無給餌生残試験)」を調べる方法などがあり,ヒラメなどでは活用されています。 しかし,クロソイは仔魚で産まれるため,卵の状態の時にその質を調べることは出来ません。また,無給餌生残試験は結果が出るまでに数日かかり,活力が悪い仔魚であったことが分かる頃には,既に水槽の中でもたくさんの死亡が起こっている,という事態に陥っていることも少なくありませんでした。このため,「良い仔魚を迅速に判断するための指標」が求められてきました。 |
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写真1 約5cmのクロソイ | ||||||||
宮古栽培漁業センターでは,過去の飼育データを整理し,仔魚の質をすぐに判断できる指標を探しました。その結果,産まれたときの仔魚の大きさを示す「全長」と,仔魚に初めて餌(アルテミアという動物プランクトン)を与えたときに,どの程度の割合で仔魚が餌を食べているかという「摂餌個体率(摂餌率)」(写真2)の,2つの項目が指標の候補に挙がり,この2つのデータを10日齢までの仔魚の生残率と比較し,両者の関係を調べました。 |
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写真2 クロソイの仔魚(約7mm) (上:摂餌個体,下,未摂餌個体) |
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(1)産まれたときの仔魚の平均全長と10日齢までの生残率の関係(図1) この2つの関係を調査した結果, 「全長が大きいほど,10日齢までの生残率も高くなる」という傾向が見られましたが, 強い相関関係があるとは言えませんでした。 このことから,産まれたときの全長だけで仔魚の質を判断することは 難しいと考えられました。 |
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図1 産まれたときの仔魚の平均全長と10日齢までの生残率の関係 |
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(2)仔魚に初めて餌を与えたときの摂餌率と10日齢までの生残率の関係 一方,こちらの関係を調査した結果, 「摂餌率が高いほど,10日齢までの生残率も高い」という傾向が見られ, 両者の関係には強い相関関係があると判断されました。 このことから,仔魚に初めて餌を与えたときの摂餌率が, 仔魚の質を判断する有力な指標になることが明らかになりました。 |
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図2 仔魚に初めて餌を与えたときの摂餌率と10日齢までの生残率の関係 |
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宮古栽培漁業センターでは,近年,この「摂餌率」を仔魚の質を判定する指標として用い,産まれた仔魚を実際に種苗生産に供するか否かの判断を行っています。質の良い仔魚で種苗生産を行うと,初期の死亡が少ないため,死んだ魚の腐敗に起因する水質悪化も防ぐことができます。 今後,さらに試験を積み重ね,産まれた仔魚の摂餌率を指標としたクロソイ仔魚の活力判定手法を確立し,クロソイ種苗生産技術の安定化と効率化を進めるとともに、成果の迅速な公表に努めていきたいと考えています(写真3)。 |
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写真3 種苗生産したクロソイ(全長約3cm) | ||||||||
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