独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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トピックス
No.113 今年はがいに(たくさん)サワラの赤ちゃんができました  2007.08.03
屋島栽培漁業センター 中野 昌次
 屋島栽培漁業センターでは平成10年から瀬戸内海で少なくなっているサワラを増やすために種苗生産と放流を実施しています。
 平成11年度から種苗生産技術の向上により,10万尾単位の生産ができるまでになり,放流魚の追跡調査体制が整った平成14年以降の調査結果から,種苗放流が資源の回復に大きく貢献していることがわかりました。
 トピックスでも過去3回にわたり,これらの成果を掲載してきました(No.49,「瀬戸内海東部海域でのサワラの放流効果調査」2004/4/1No.73「今年もサワラの量産に成功し,放流を行いました」2005/7/25No.94「サワラの世界は男女平等?」2006/9/15)。
サワラの取り上げ風景
 これまでたくさんのサワラ種苗を作る努力をしてきましたが,平成16年度から18年度までの3年間,サワラの受精卵が計画的に採卵できなかったり,餌とするイカナゴのシラスの入手量不足や入手したシラスが大きすぎてうまく餌付できない等が原因で10万尾を超える種苗の生産ができませんでした。
 今年は連休明けの5月8,9日の2日間で計画数量を超える111万粒の受精卵が得られ,上々の滑り出しで良い成果が期待されました。しかし,ふ化が始まるとタイミングを合わせたように大風が吹き,取水している海水が濁ってふ化率が低下したり,サワラ仔魚期の餌として重要なマダイのふ化仔魚の産卵がいつもより1ヵ月早い5月下旬に終盤を迎えたため,供給不足になるなど,先行き不安の中での生産になりました。このため,近隣の県の栽培漁業センターにもご協力いただき,マダイの受精卵の入手に奔走しましたが,それでも餌用のふ化仔魚が不足したため,シラスの餌付けをいつもの年より4日程度早め,ふ化後11日目から行うなど綱渡りの飼育をせざるを得ませんでした。
 シラスを給餌開始してから2日目には摂餌する稚魚も現れ,その後は順調に飼育を行うことができました。その結果,6月5,6日のふ化後24日目に全長35〜37mmの種苗22万尾を取り上げることができ,4年ぶりに20万尾を超えるという良好な成績をおさめることができました。種苗生産終盤,様子を見に来た漁師さんからも「今年はがいに稚魚がおるの〜」と,たくさんとかすごいを意味する讃岐弁が出てきました。

 今回,屋島栽培漁業センターだけでなく瀬戸内海区水産研究所伯方島栽培技術開発センターでも約19万尾の種苗の取り上げができました。生産が良好だった年の種苗は健康状態も良く,その後の中間育成でも生き残りが良いことがわかっていますので,中間育成した放流魚が少しでも多く生き残って,サワラの資源が回復することを期待しています。

屋島栽培漁業センターの元気なサワラたち(動画。約35秒)
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