独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
研究情報等
トピックス
No.107 ウナギ仔魚飼育技術が順調に向上しています!!
     ―量産化への第一歩,人工シラスウナギ年間100尾生産の段階へ―  2007.04.17
志布志栽培漁業センター 加治 俊二
 世界で生産されるウナギ類の半分が日本人の胃袋の中に入るほど,日本人はウナギが大好きな国民です。そのほとんどは国内外の養殖ウナギですが,養殖に使用されるウナギの稚魚は,全て捕獲された天然のシラスウナギです。近年,そのシラスウナギの捕獲量が不安定で,その価格の変動は養鰻経営に大きな影響を与えています。
 天然のシラスウナギに頼らなくても養殖が成り立つよう,研究を続けてきた水研センター養殖研究所が2002年に世界で初めて,人工的に卵からシラスウナギまでの飼育に成功しました。その方法をベースに,志布志栽培漁業センターがウナギ仔魚の飼育技術の改良に取り組み始めてから5年が経ちました。この間試行錯誤を繰り返し,比較的安定した飼育結果が得られるようになっています。これまでの経過を簡単に説明しましょう。
 まず親から卵を得る段階から説明します。ウナギはただ水槽で餌を与えているだけでは産卵してくれません。成熟を促すホルモンを繰り返し投与することで,2〜4ヶ月後にやっと卵が得られます(写真1)。
 しかし,良い卵が安定して得られるまでには至っていません(写真2)。すでに大規模に養殖が行われているマダイやヒラメの場合は,受精率(受精している卵の割合),ふ化率(受精卵がふ化する割合)ともに100%に近い卵を得ることができますが,ウナギの場合は良い場合でも受精率,ふ化率ともに40%程でした。そこで,水温,ホルモン量,産卵時間,同居させる雄の選別などの改善を行った結果,受精率70%,ふ化率50%まで向上させることができました。この卵質の向上が次の飼育成績の向上にも大きく寄与したと考えています。

写真1 産卵する2-3日前のメス
ここまで来るのに毎週ホルモン投与を繰り返して8〜16週を要す

写真2 産卵当日のウナギの卵
濁っているのは未受精卵か発生異常卵
 ウナギ仔魚の飼育は養殖研究所の開発した飼育方法を再現しています。飼育に取り組み始めた平成2002年当時,すべての飼育例で,仔魚は餌を与え始めて2週間以内に全滅しました。2年目には飼育試験回数をできるだけ増やすという力技で,ようやく30mmを超えるレプトケファルス1尾を飼育することができました。この年,志布志栽培漁業センターの所属する日本栽培漁業協会が水産総合研究センターに統合されたことにより,養殖研究所と同じ組織となったことを機に緊密な情報交換と連携による研究開発を行いました。
 さらに,室内温度を季節にかかわらず一定に保つことのできるウナギ飼育専用室を新設し,ハード面の整備も進みました。そして,3年目の平成16年度,遂に志布志栽培漁業センターでは人工シラスウナギ8尾の生産に成功し,翌年度にも14尾を生産しました。5年目に当る18年度には,これまで行ってきた殺菌海水の使用や容器の形状の改良などに加え,なるべく水質を悪化させないための工夫として,餌料の殺菌,養殖研究所の研究結果で初期のふ化仔魚の生き残りに効果があるとされた飼育水への卵白の添加などを試みた結果, 112尾がシラスウナギへの変態を終了し(写真3),1機関で年間100尾の生産を初めて達成しました(図1)。


写真3 人工シラスウナギの横顔
下顎が異常な個体が3割ほどいる。この防除対策も今後の課題である

写真4 ウナギ仔魚のレプトケファルスの華麗なる遊泳
全長30〜50mm

   図1 年度別人工シラスウナギ生産結果及び途中経過  
 この5年間で比較的安定した仔魚飼育を行うことができるようになり,量産化への足掛かりがわずかながら見えてきました。しかし,億単位で養殖用として採捕されている天然シラスウナギを人工飼育シラスウナギに置き換えるまでには依然として高いハードルがいくつも残されています。その一つは,得られた卵の受精率,ふ化率が低いこと。二つ目は現状の仔魚飼育方法は小型の飼育容器でなければならないこと。三つ目は,写真3に見るように人工シラスウナギの形態異常の問題があることです。
 現在,日本のウナギ研究者の大半が参画する農林水産技術会議委託プロジェクト研究が進行中です。このプロジェクトでは,親魚養成〜成熟誘起〜採卵〜仔魚飼育の全段階の課題を網羅して取り組んでおり,これによって量産化を視野に入れた技術開発が進むと考えています。