独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.095 第3回栽培漁業国際シンポジウムに参加してきました!   2006/10/17
宮津栽培漁業センター 升間 主計
 栽培漁業国際シンポジウムとは,人の手によって育てられた稚魚(自然の状態よりも生残率が高い)を放流することによって,過剰な漁獲や環境の変化などによって少なくなった資源の増殖や,絶滅に瀕している種を保存する活動について,世界中の関係国の研究者が集まって,最新の研究成果や問題点について議論する場です。日本では,栽培漁業の推進を国の施策として諸外国に先がけ40年以上前から取り組み,先進的な研究開発を実施しています。このシンポの記念すべき第1回目は,1998年にノルウェーのベルゲンで開催されました。2回目は,2002年に水産庁と当時の日本栽培漁業協会が主催し,神戸で開催されました。そして,今回の第3回目のシンポジウムは,アメリカ,ワシントン州シアトルにおいて,9月18日から21日までの4日間の日程で開催されました。水産総合研究センターから10名が参加し,それぞれのテーマで口頭発表,ポスター発表を行いました。
 ちなみに,シアトルと言えばイチロー,城島の所属するマリナーズの本拠地で有名です。日本からの参加者は,会議の後,野球観戦を望んでいた方も多かったかと思います。しかし,残念ながら,ちょうどマリナーズが遠征していて観戦できず,落胆した参加者も多かった事でしょう。私は,1日目の会議終了後に,気分転換と記念に,ホテルからセイフィコフィールドを一周して帰るコースでジョギングをしてきました。球場の外のイチローと城島の写真には日本語でイチロー,健司と書かれていました。
 シンポジウムが行われたWestin Seattle Hotel & Towers(写真1)はシアトルの中心街にありました。高級ホテルの一つです。私たちが泊ったホテルは,そのホテルから歩いて5分程度の所にあるホテルで,クラスはかなり下のホテルでした。シアトルは一般にそのようですが,ホテル代の高いことといったらありません。日本で言えばチョットしたリゾートホテル並みでした。エレベーターで一緒になった日本の観光客の人も,私が問いかけたわけではないのに,「シアトルはホテル代が高いね」とぼやいていました。
 シンポジウムには21の国や地域から198人の参加があり,なかでも地元アメリカが最も多く,次いで日本,オーストラリア,中国と続いています。日本からの参加者は水研センターの他に大学,県からの参加がありました。
写真1 シンポジウムが開催されたホテル
 今回のシンポは,7つのテーマに分かれ,基調講演や研究発表で66人が口頭発表し,28名がポスターセッションによる発表を行いました。私はポスターセッションで発表しました。国際的な会議での口頭発表は経験があったのですが,ポスターセッションは初めてで,どのようにしたらよいのか,インターネットで調べたり,アメリカの知人(女性の研究者)にメールで心得を教えてもらったりしました。彼女のアドバイスは,絶対にこちらから声を掛けて,「私のポスターを見て,私の話を聞いて下さい」などと言ってはダメ,その人が他のテーマに興味があり,限られた時間内で訪ねたいポスターがあるかも知れないから,自分で質問をしてくるまで待っていなければダメなのだ,とのことでした。彼女はポスターの前にビールを何本か置いて客寄せをしたそうですが,結局ビール欲しさに集まった人だけだったようです。私はそのようなことはしませんでしたが,日本人を除いて5〜6名の方が質問をしてきてくれたので,拙い英語ですが,なんとか説明しました(写真2)。でも,口頭発表と違って,ジャパニーズ英語でもリラックスした雰囲気で説明することができ,仕事ですが,楽しい時間を過ごすことができました。
写真2 英語での説明に奮闘する筆者
 このシンポジウムは,1.資源回復と栽培漁業システム及び漁業管理の役割,2.種苗放流はどんな時に他の資源管理方策より有益なのか?3.制度的及び社会経済的な問題点,4.放流戦略,5.天然資源と放流資源の相互作用,6.種苗放流による生物学的見解,7.発展の方向の7つのテーマに分けられ,発表と終始活発な議論が行われました。
 当然,全てが英語で,しかもネイティブの英語はメチャメチャ早く,スクリーンに映し出された図表と聞き取れた数少ない単語から推測するしかなく,会議が終わったときには,頭の中が痺れたような感じがしました。良く理解できたのは,日本人の英語と中国人の英語でした。さらに英語を勉強して,ネイティブとの議論に加われるようにしなければと思っています。
 全ての発表が終了した後,本シンポジウムをリードしていた科学委員会メンバーによる総括と総合討論が行われました。その中では,多方面での学際的な取り組みの必要性と役割,利害関係者(stakeholder)と権利,環境収容力と環境保全,放流資源に対する天然資源への配慮,遺伝的多様性等が議論の中心となり,これらの課題は今後栽培漁業を効果的かつ有効に進めるために解決すべきであることが確認されました。
 水研センターからは10名が口頭発表,ポスター発表を行い,豊富なデータに基づいた発表は高く評価され,特に,水研センター南伊豆栽培漁業センターの鈴木重則氏が発表した“近親交配を最小にするという考えに基づいたマツカワの親魚管理に関する実験的研究”は全ての発表中最も優れた発表として,ベストプレゼンター賞に選ばれ表彰されました(写真3)。世界の栽培関係の研究者に水研センターの研究を知らしめた点でも価値ある受賞でありました。ちなみに,ノルウェーでの第1回目は大河内氏(旧日本栽培漁業協会,現水研センター)が,2回目では益田助教授(京都大学)がベストプレゼンター賞を,また,2回目で菅谷氏(当時東北大学,現水研センター)がベストポスター賞を受けており,ベストプレゼンター賞に関しては3年連続日本人研究者の受賞でした。
写真3 ベストプレゼンター鈴木氏の表彰
 次回のシンポジウムは,栽培漁業の発展が著しい,中国の上海で2010年に開催される予定です。栽培関係者の皆さん,今度はお隣で開催されます。是非奮って参加してみて下さい。きっと自分たちが行っている栽培への取り組みに役立つ情報が得られると思いますよ。