独立行政法人 水産総合研究センター 栽培漁業センター
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No.070 マダラ種苗50万尾を放流しました
        〜種苗生産における生残率が3年連続して向上〜   2005/05/25
 マダラは北部太平洋から黄海にかけての水深300mの海域に分布する冷水性底棲性魚類で,日本海側では山口県,太平洋側では茨城県を南限とします。主要な産卵場は青森県陸奥湾,石川県能登半島周辺,太平洋側では福島県北部沿岸です。近年,日本海のマダラの資源状態は低迷し,産卵場の南限に当たる石川県では,ここ数年の漁獲量がピーク時の1/5にあたる300トン以下に減少しています。
 能登島栽培漁業センターでは,開所当初の昭和57年から本種の種苗生産に取り組み,ウイルス性神経壊死症対策や餌料の栄養価の改善を行うことによって,平成15年度から3年連続で本種の大量生産に成功し,放流試験を行うことができました。
写真1 マダラ
種苗生産
 今年度の種苗生産は,富山県水産試験場の海洋深層水施設で養成した成熟魚と,富山県氷見漁港で水揚げされた成熟魚から採卵し,2月上・中旬に50kl水槽3面に収容して開始しました。おおよそ70日間の飼育で全長25〜32mmの稚魚54万尾を取揚げ,平均生残率は44%でした(表1)。平成15年には71.0万尾,16年には74.9万尾を生産しており,3年連続して大量生産に成功しました。
表1 平成17年度マダラの種苗生産結果の概要
生産区分
収容
取り揚げ
月 日
尾数 (万尾)
月 日
尾数 (万尾)
平均全長 (mm)
生残率 (%)
1
H17.2.4
31.7
H17.4.18
15.7
28.8
49.5
2
H17.2.4
41.9
H17.4.18
15.2
32.8
36.3
3
H17.2.12
50.6
H17.4.19
23.2
25.5
45.8
合 計
124.2
 
54.1
 
43.6
 この好結果の要因は,これまで最大の懸案であったウイルス性神経壊死症(VNN症)を防除できたことにあります。VNN症の感染経路は明らかではありませんが,防疫体制として受精卵のオゾン消毒,飼育用水の消毒,水槽ごとに使用する長靴や手袋の交換,使用した器具の塩素消毒,水槽ごとの隔離飼育などを行ったことによるものです。
 また,3種類の栄養強化剤を交互に使用することで、マダラ仔稚魚の餌料であるワムシの栄養状態が改善できたことも大きな要因です。まだ,配合飼料への切り替え時期に当たる日齢55〜65に死亡しやすい傾向がありますが,効率良く配合飼料へ餌付けることで成長差は少なくなり生残率は向上するものと思われます(図1)。この様に,年々飼育技術を改善することによって生残率を向上でき,3年連続の好成績が得られたと考えています(図2)。

図1 マダラ稚魚の日齢別死亡尾数

図2 種苗生産尾数と生残率
種苗生産
 能登島栽培漁業センターでは,生産した種苗に標識を装着して放流試験を行っています。能登島周辺の七尾湾はマダラ産卵場となっていて,ここで生まれ育った稚魚は七尾湾で浮遊期を過ごし,全長40mmごろに底棲生活へと移行します。そして,湾内の水温が上昇するにつれて徐々に湾内の最深部に集まり,さらに水温が12℃を越えると沖合のさらなる深場へ移動するものと推測されています。放流試験の前に調査を行ったところ,多数の天然マダラ稚魚が底曳網に入網していることから,放流魚がどのように天然魚の群れと合流して行くのか,今後の解析が期待されます。

写真2 放流したマダラ種苗

写真3 底曳網調査で採集されたマダラ稚魚